感想:白水社『ファイヤーガール』を読む。
- 作者: トニーアボット,Tony Abbott,代田亜香子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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白水社から刊行されている「ファイヤーガール」を読みました(出版社による紹介)。
ちなみにTYPE-MOON BOOKSの「ファイヤーガール」の感想はこちら。
買おうかどうか悩んだんですが結局地元の図書館で借りました。
P.S.後日購入しました、出来るだけ本(…に限らずモノ)は買ったほうがいいと思うの(※図書館が駄目という訳ではないですが)。
本書ジャンルはヤングアダルトになると思います。
ですが地元の図書館では一般書籍の棚、英米文学の棚にありました。もし児童書の棚になかったらそちらを探してみるといいかもしれません。
…まあ、普通は棚を直接見る前に検索端末で確認してからだとは思いますけど。
あらすじ(作品紹介)
主人公トムのクラスにジェシカ・フィーニーという女の子が転校してました。
それまでのトムはいつもどおりの毎日をおくっていました。
クラシックカー、クラス委員の選挙、コートニー、ジェフといったことで頭がいっぱいだったことを除けば。
そんなときに"ひどいやけどを負った"ジェシカがやってきたのです。
教室は異様な空間と化しました。いままでの騒がしさは消え、誰もが彼女のことを快くは思いませんでした。
トムも他の子供たちと同様に彼女に対して良い印象を持ちませんでした。
むしろ関わりたくないと思っていました。
けれども、みんなで手を繋ぐときにジェシカと手を繋いだこと、家が近かったために彼女が休んだ時に宿題を届けにいったことから、少しずつではありますが、彼女に対しての気持ちが変わっていくのです。
以下レビュー(感想)ぽい何か、という名の雑記
本書は冒頭でもあるとおり、"ジェシカのことでなにひとつたいしたことは起きてい"*1ません。
粗筋を大雑把にまとめると、ジェシカが治療のためにトムの住んでいる街にやってきて、2,3週間ほどいましたが、治療方法が合わなかったため元の病院のある街に帰って行くという話です。
そんな話ですから作中で特別何かが起こるということはありません。
でもすごくいい話だと思うんですよね。子供のころ読んでおけばよかった…、と書いておいてこの本が出たのが2007年だという。
" 皮膚は、ざらざらで、でこぼこしている。ピンクと白と赤でぐちゃぐちゃに塗ったくったみたいだ。
くちびるは、ふくれあがって、鼻とあごのあいだのほぼ全体に広がっている。目は、とけてしまったような皮膚のむこうからちらっとのぞいている。髪はかなり短い。腕は服でかくれていたけど、むきだしになっている手首のあたりはしみだらけだ。指は、なにかをつかもうとしているみたいに曲がっている。"*2
トムによるジェシカを見たときの印象です。なにひとつ不自由がない人間の姿とは違っていて、今まで見たことがないものに対する恐怖を感じている場面だと思います。この前の、p17でトムが気になっている女の子、コートニーについての描写もあるのですが、それがあることによってより強調されています。
そうして、ジェシカが周りと違うことを強く印象付けたあとでトムの母親に、"「その女の子よ。その子を助けてあげなさい」"*3と言わせています。
また、p73の、"リンカーン"についての詩を授業で行ったことや、コートニーのスピーチで、"たとえあんまり意見をいわなくても、耳をかたむけることが絶対に必要"、"「民主主義をすすめていく上での心臓部です」"*4といったことなどに、平等・民主主義というメッセージを強く込めているように感じました。
と、ここまで書きましたが別に説教くさい内容ではなく、特別政治的メッセージが強いということもありません。そんな小説では決してないです。上記に関してはあくまで僕がそういう風に感じた、というお話です。
上記以外にはジェシカとのやり取りの、漫画の話とかも魅力的ですし(というかここがこの作品において一番のキモだと思います)、訳者の代田亜香子さんもあとがきで書いているように、"強がっているジェフのさみしさ"や、"聡明なコートニーのやさしさ"といった登場人物らの内面も印象的です。
コートニーみたいな娘は、「マジ天使」*5ですね。元ネタよりも天使らしいと思います。というかこれは僕の好みです。実際にはそうそういない娘だけど。いたら紹介してください。
最後のほうでトムは”ジェシカのおかげで前よりいい人間になったといいたいところだけど、よくわからない。”*6といっているように、特別すごいことが起きて、すごいことをして、主人公がものすごく成長した、ということを体感する物語ではありません。けれども確かに主人公は勿論、読者にもしっかりと残るものがあると思います。もし興味を持って頂けたのなら是非読んでみては如何でしょうか。
……と、今回もレビューっぽい何かでした。内容があるかどうかは別として文章のボリュームは頑張りました。今後もこの感じで続けられたらいいなあ、と。できるだけ頑張っていきたいです。といって次回で駄目になったりw
次回も読んで頂けたら幸いです。それでは失礼します。
(文・草間ノブユキ)