あさっての方向。

サークル「あさっての方向。」のどうでもいい日記です、よろしくお願いします。※なお同名のアニメ作品とは一切関係がありません。

映画『鈴木先生』を観てきたお話。

 

鈴木先生 完全版 DVD-BOX

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鈴木先生 (1) (ACTION COMICS)

鈴木先生 (1) (ACTION COMICS)

 

映画『鈴木先生』を観てきました、と言いますがもう1か月前の話ですよ、はい。

 

で、この『鈴木先生』という作品は2011年春、テレビ東京系列の月曜22時枠でドラマシリーズで放映されていました。

キャッチコピーは「誰も正解を教えてくれない、それが学校だ」。

話の内容としてはよくある学園教師物でクラスで起きる事件を主人公である鈴木先生が解決したり教育的指導を行うというものです。

しかし、『金八先生』や『GTO』に出てくるような不良や問題児がメインになることはなく、普通の生徒が事件を起こしたりすることに焦点が多く当たります(と言っても実際に作中のような事件が起きればその生徒は問題児になるわけですが)。

また、主人公である中学教師・鈴木先生も熱血教師ではなく冷静クールな教師で哲学的な道徳を説くところも物語の教師役としては珍しい気がします(実際はクールなのを演じてるだけの妄想破廉恥男熱血漢なわけですが)。

それと問題提起される『性教育』に深く突っ込んでいる作品です。

 

 映画の話に戻ると、物語はドラマ最終回の時系列の続きである二学期の生徒会選挙と文化祭の話から始まります。

映画での大まかな事件は生徒会選挙編と卒業生の立てこもり事件です。

特に後半の立てこもり事件は鈴木先生の生徒小川が人質に取られ、犯人に「あなたをレイプします」と宣告されたりショッキングな展開。

ある意味映画らしい大きな事件が起こるわけです。

 

ここからは映画の感想として多少のネタバレを含むのですが、ドラマシリーズが好きだった人は満足する映画だったのではないのかと思います。

映画自体もナンバリングが11話でOPがドラマと同じく入り、挿入歌の入り方もドラマを意識していたものと思われます。

不満点を挙げるとしたら映画の一番の盛り上がりであるワイヤーアクションのあのシーン。

盛り上がりに欠けていたように感じたのですが、変にBGMで盛り上げられたりしても違和感があったと思うのでよかったのか。

小川の凄さを見せつけるというのはわかるのですがどうにも置いていかれてしまった感がありました。

個人的には予告がピーク。

あと鈴木先生役の長谷川博己の喋り方が少し早口に感じました。

しかし、ドラマ版では苦い思いをした隣のクラスの神田さんやラスボス足子先生のフォローがあってよかったと思います。

 

ドラマ『鈴木先生』は視聴率はあまり思わしくなく2001年以降のゴールデンアワーのテレビドラマでは最低平均視聴率2.16%を記録しているのですが、その反面第49回ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞受賞(2012年)、日本民間放送連盟賞テレビドラマ番組部門最優秀賞受賞(2011年)など、内容は高い評価を受けています。

また、演出や役者の演技も凄く個人的にドラマ作品で1,2位を争う出来と言っても過言ではないです。

 

映画は鈴木先生達と直接関係はない卒業生が事件を起こすわけですが、教師と生徒の関係って面白いものだと思ったわけです。

教師は何十、何百人と生徒たちと過ごすわけですが生徒にとっては学年、クラスの担任って一人なんですよね。

ドラマなどで起きるような大きな事件などなくても生徒は結構影響されるものです。

人によっては理不尽なことを言われたりした思い出があったりするかもしれません。

でも、映画であったような問題の原因と言いますか、人(教師)のせいにするってのはやっぱり違うんですよね。

理不尽さを訴えるのはいいんですが、それを正しく訴えられるのか。正しく行動できるのか。

前半の生徒会選挙事件は鈴木式教育メソッドの開花であり、後半の立てこもり事件は摩耗した普通の生徒が起こした過ちでしょうかね。

映画のキャッチコピーは「常識を打ち破れ、世界は変わる」

キャッチコピー通り2つの事件で良くも悪くも世界は変わってるんですよね。

作中でも言ってる通り正に紙一重だな、と。

 

僕はこの作品、学生時代を通り過ぎた人たちに観てもらいたい。

特に普通に過ごしてきた人たちに。

作中の生徒たちは凄くキラキラしていて眩しく見えるんですけど、そんな彼らを優しく見守りたくなるような大人を『演じ』たくなると思います。

道を踏み外さず、摩耗しきることなく普通に生きていくために。

そんな気持ちにさせるいい映画だったと僕は思います。

 

(文・小林晋平)