感想:竹書房『世界でたったひとりの子』を読む。
上記リンク先は、お値段的にもお手頃な文庫版です。
本当はロードショー前に「陽だまりの彼女」を読んで、感想を書こうと思っていたのですが、気づいたら公開していたのでこちらから。
ちなみに「陽だまりの彼女」については後日ちゃんと読んで書きます。
買うだけ買ってあるので(←早く読め!)。
医療技術が発達し、いつまでも若いまま生きられるようになった世界。
でも代わりに、子どもがほとんど生まれなくなった。
数少ない本物の子ども:タリンは、親代わりのディートに「子どもとのひととき」を提供する仕事をさせられている。
そうやって二人は生計を立てていた。
けれどもタリンは、あと数年で子どもではなくなってしまう。
そこでディートは、タリンに、大人になる前に見た目を子どものままにしておく「永遠の子ども」手術*1を受けるよう話を持ちかけられる。
だけどタリンは永遠の子どもにはなりたくなかった。
等身大の自分でありたかった。
少年タリンはどうなってしまうだろうか?
以下レビュー(感想)ぽい何か、という名の雑記
…というSFですが、苦手でも全然大丈夫。
あらすじ以上のことは出てこないでのこんがらかることはありません。
でもこういったことは現実で起こるかも?
医療技術の発達によって若くいられるってことは。
実際に子どもがほとんど生まれなくなる(生物学的に)かはわかりません。
けれども色々な事情、金銭的都合とか余暇の充実とか、から子どもが生まれない社会になるんじゃないでしょうか。
しっかし子どもがいない社会って怖いですね。
430頁の16章、と訊くとボリュームがありそうですが*2どんどん読めるはず。
主人公のタリンは、永遠の子どもにはなりたくないと思っています。
"たしかに魅力的だ、だが……”*3や、"PPを受けてしまったら、二度ともとにはもどれない。…(略)…やっぱりおとなになりたくなったので戻してくださいということはできないのだ"*4という点からもわかります。
主人公と同じように、僕もひとつの時間に閉じ込めらるのには耐えられないです。
永遠の子どもが魅力的であっても。
ディートという男はタリンの親代わり。
ただ、育ての親というだけではなく、タリンを使って商売をしています。
あらすじに書いたように「子どもとのひととき」を提供しています。もちろん、子どものいない人々に。タリンを1時間くらい貸して。
子どものいない世界なので、高いお金を出して借りたい人間は沢山います。
実際、2章は「午後の子ども」というタイトルで、タリンを借りた女性との話になっています。
また、ここでは女性の回想、夫の言葉で世界観がよりわかりやすく書かれています。以下、引用です。
"僕たちには子どもができない。それはたしかだ。だけど、今は多くの人たちが子どもを持てないでいる。…(略)…けど、僕たちは随分恵まれているじゃないか。長く、それは長く生きられるようになった。身体が弱ることも、老いること、しわができることも、いろいろな痛みに苦しむこともなくなった。ずっと動きまわっていられるんだ、おそらく死ぬ日までね。…(略)…だから、もし、愛情を注ぐものがほしいんなら、子犬か子猫を飼って、その成長を見守ろう。他人の子どもに愛着を抱くなんてむだなことはよそう。…(略)…子どもを借りて午後を過ごすだけでもだめだ。そんなことをすれば、現実と向き合うのが余計につらくなる。…"*5
といった具合に。けれども女性は夫に内緒で子どもを借ります。
ディートのような人間から。
けれども、ディートはタリンを、子どもと過ごす時間を欲している人間に貸し続けることはできません。
なぜならタリンはあと数年で子どもではなくなってしまうから。
そこでディートは、タリンに、大人になる前に見た目を子どものままにしておく手術、PPインプラント手術を受けるようと考えています。
と、ここで問題が。
上記でも書いたようにタリンは子どものままでいるのが嫌なのです。
だから逃げようと考えます。けれどもディートは抜け目のない男でなかなか隙をみせません。仮に逃げ出せてもまわりには大人だけしかおらず目立ってしまい、結局掴まってしまうでしょう。
また、子どもをさらって大儲けしようと考える人間もいるはずで、事実タリンを誘拐しようとする男も迫ってきます。
タリンはどんどん追い詰められます。
PP手術が迫り、怪しい影が忍び寄ってくる。
本当に恐ろしい世界ですね。…と、書きましたが勿論、魅力はそれだけではありません。だから興味を持ったら読んでみてください。
きっと楽しめるはずです。だから是非手に取ってみることをお勧めします。
ちなみに僕は、3章の「世界の復讐」ってタイトルが好きです。
…どうでもいいですね(笑)
…とレビューっぽい何かでした。
ちょっとサボりが続いた感じですが、今日は書きました。内容も大事ですが量も大事で、これぐらいの量を続けて書きたいですね。
次も極力頑張ります(…さてさて、どうなることやらw)。
ということで次回も読んで頂ければ幸いです。
それでは。
(文・草間ノブユキ)